コラム
〜 安城産業文化公園デンパークでの挑戦 〜
生きる力になる 子どもの体験を守りたい!
株式会社ボーネルンド企画部 林耕介
あそびのもり 2019年 51号より
思いっきり体を動かす遊びには、子どもたちが経験するべき多くの学びがあります。
自然のままの木を使ったドイツの大型遊具を導入した安城産業文化公園デンパーク。
あそび場の設計者である株式会社ボーネルンド企画部の林耕介に思いを聞きました。
いま、子どもがのびのび遊べる あそび場が求められています。
多くの自治体が、子育てしやすい街づくりに取り組んでいますが、あそび場に着目する例はそれほど多くありません。ボーネルンドには子育て中の皆様から、自分たちの地域にも子どもがのびのび遊べる場がほしいと、あそび場を求める声が多数集まっており、行政の皆様への働きかけも行っています。
そんな中、2017年春、愛知県安城市から、安城産業文化公園「デンパーク」の開園20周年を機に、子どものためのあそび場をリニューアルし充実させたいというご相談をいただきました。
「子どもも楽しいデンパーク」をテーマに、どのような環境を実現するかについて議論を重ね、2018年3月にリニューアルオープン。屋内外のあそび場が完成し、リニューアル前の1・5倍もの多くのご家族が訪れるようになっています。
「リスク」を体験することが生きる力を育みます。
特に人気なのが、屋外エリアの大型遊具です。ドイツからやってきたこの遊具は、天然木の曲線をそのまま生かしています。まるで森の中で木登りするような感覚で、本能を存分に発揮しながら遊ぶことができます。高さはなんと12m!一見危ないと思われるかもしれませんが、子どもたちが自分の頭で考えて、自分の力に合わせて遊び方を選んでチャレンジできるようにすれば、子どもは危険性をきちんと察知することができます。例えば、階段、ロープ、はしご、ボルダリングの壁など、登り方にも様々なアクセスが用意されています。
日常生活の中でも、子どもたちが遊ぶ環境には、「リスク」と「ハザード」という2種類の「危険」がつねに潜んでいます。「リスク」とは、子どもが自分で察知できる危険。「ハザード」は、そうではない罠のような危険です。ハザードは徹底的に排除する必要があります。一方の「リスク」は子どもたちに体験させてあげることが、生きる力を育むためには欠かせません。
日本の公園からは、高さのある遊具や回転する遊具は「危ないから」という理由で減り続けていますが、安城市役所の皆様には、子どもの成長にとってのあそびや遊具の価値を深く理解していただきました。
実際に遊んでいる子どもたちの様子を見ると、チャレンジして「できた!」という達成感があるだけでなく、子どもたち同士が助け合ったり協力しあったりしているシーンを多く目にします。子どもたちが、大いに遊ぶことでしか獲得できない、生きるための力を、自分で身に付けていると感じます。
このあそび場が、多くの方々に「あそび」の価値を伝えるきっかけになると考えています。
デンパークのあそび場づくりで大切にしたポイント
- 達成感や自信が身につく
- 挑戦したいと直感的に思える
- 危険を予測し、課題解決力を獲得
子どもの挑戦したい!を引き出す
安城産業文化公園 デンパーク
愛知県安城市の代表的な公園のひとつ。高さ12mもの大型遊具がある屋外あそび場「風車の広場」や乳幼児向け「子ども広場」、天候に左右されず親子で遊べる室内あそび場「あそボ〜ネ」の3つのゾーンが。
ドイツ・ジクホルツ社の遊具
「リーチ・フォー・ザ・スカイ」が大人気!
木登りのようなチャレンジができる高さ12mの大型遊具。
スパイダーネット
地上からの距離は約3m。落ちないように、しっかりつかんで。
綱渡り
すれ違うときにひと工夫が必要。体を動かしながら頭も使う。
バードネスト
高い所にある「巣」を目指して!見晴らしはどんなだろう?