コラム

大切なのは、一生続く"学びたい気持ち"
家庭で楽しむアクティブ・ラーニング

あそびのもり 2019年 52号より

大切なのは、一生続く"学びたい気持ち"

「アクティブ・ラーニング」という言葉を知っていますか?

これは、教師の説明を聞く受動的な授業ではなく、議論や行動を通して学習者自らが能動的に学習するための指導方法のこと。グローバル化、多様化、そして情報化するこれからの社会の中で、自ら考え、行動できる能力が求められていることから世界中で注目され、実践され始めています。

日本でも、2017年に発表された文部科学省の学習指導要領の中で、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善が求められ、話題となりました。古くから幼児教育の現場では、アクティブ・ラーニングが実践されている施設もありましたが、最近では一部の大学や高校が本格的に取り入れ、実績を上げているようです。

そして、2020年の教育改革により、大学入試の内容が変わります。それに対応するため、高校の授業内容も変化し、さらに中学校、そして小学校…というように、今、ほぼ同時に全学校関係者が課題に直面している状態といえます。

ここで重要なのがアクティブ・ラーニングが持っている本来の意味は何かということ。もっと豊かで可能性の広がる考え方であるはずなのに、このままでは"受験のためだけ"ということになってしまうのではないでしょうか。

一般的に『できるだけ早く』とか『いまできるように鍛える』ことが教育だととらえられがちですが、『ママに言われたから』『やったら褒められるから』という動機が一生続くことはありません。ボーネルンドは『生涯続く学びたい気持ち』を持つことが最も大切だと考えています。その気持ちは子どものときのあそびを通じて育むもの。あそびの中での小さな気づき、楽しかったと前向きに思えた記憶や経験を、子どもたちの柔軟な脳にひとつひとつ積み上げていくことこそが、「生涯学びたい」という気持ちを育むのだと考えています。

この点で、世界には参考にできる先進事例があります。たとえばオランダでは「アクティブ・ラーニング」的な取り組みを、すでに実践しています。そこには、今後私たちが目指したい教育法のヒントが見つかります。

オランダでは、1895年に幼稚園が廃止されました。幼児教育は小学校からスタートします。小学校には、早くて3歳から入ることができます。小学2年生は7歳からとなっていますが、1年生の一学年には4〜6歳の子どもが混在しているのです。個人差がいちばん大きい年齢層なので、文字が読めたり書けたりする子、数が数えられる子もいれば数えられない子もいます。さまざまな成熟度の子どもたちをだいたい20〜25人くらいでひとクラスにまとめ、担任の先生は一人です。子どもの人数が少なくはない中で、先生は効率よく授業を行わなければなりません。ですから当然、子ども同士の学び合いが活発に行われます。遊具も、年齢ごとのあそび道具をそろえるスペースがないため、ひとつの道具でも年齢や発達段階に応じてさまざまに取り組めるよう、シンプルなものが厳選されて置かれています。小さな子には一見遊び方が難しそうでも、先生が少し助言することで子ども一人でも遊べるような道具が教材として選ばれ、教室に置かれているのです。これらの取り組みは、家庭でも取り入れられるものだと私たちは考えています。同じあそび道具であっても、3歳のときには3歳なりの遊び方、6歳には6歳の遊び方があるということです。

教育道具の役割とはどんなこと?

小学3年生になると学校の授業内容に抽象的な概念が一気に増えます。1、2年生のころに習う漢字は、「山」や「牛」など具体的なものが中心ですが、3年生になると「委員会」の「委」や、「文章」の「章」など、形のないものを表す漢字を習い始めます。算数では、「二等辺三角形」や「円」などの基本的な幾何の考え方も学びます。ここで勉強についていけなくなる子どもたちは少なくなく、勉強に対して苦手意識を持つようになってしまいます。例えば「数える」という行為と「数字」そのものを結びつける、など子どもたちが抽象的な事柄を理解するときに重要なのは「見える化」させることです。それを手助けするのが教育道具の役割であり、存在意義だと、私たちは考えています。

道具には実体験を通して納得させる力がある

大人が想像する以上に、子どもたちは初めて見るもの、初めて聞くものばかりの世界で生きています。だからこそ、道具を使用して実体験し、納得することが大切なのです。幼少期なら、苦手意識はありませんから、楽しい記憶が残りやすくなります。子どもたちの典型的な行動のひとつとして、同じことを繰り返す、ということがあります。これは何度も何度も試して確認し、その結果に納得することを「心地良い」と感じているということ。子どもたちは、2回、3回と繰り返し実験し、体験して学んでいるのです。ですから、この時期は、子どもたちの「繰り返すあそび」にとことん付き合ってあげてほしいと思います

すべての子どもたちが「できた!」という達成感を味わいたいと思っています。それを導くためのアプローチには、大きく分けると2つのタイプがあります。簡単なところからスタートし、段階的に自信を持たせながらゴールを目指すスモールステップタイプと、最初から難易度を上げ、ダメだったらいったん戻って何度もトライするタイプ。どちらの方が、その子どもに合っているのか、同じあそび道具でもアプローチを変えることで興味を持って取り組み始めることもあるので、ぜひ、ご自宅でお子さんをよく観察しながら試していただきたいと思っています。

子どもたちの試行錯誤はトライ・アンド・リトライ

子どもたちは、「失敗」ということを大人のように評価せず、当たり前のプロセスとして過ごしています。あそび道具を前にして「さっきやってみたけど上手くできなかった」と落ち込んでいる子どもはいません。大人は試行錯誤という言葉を「トライ・アンド・エラー」と表現しますが、子どもたちにとっての試行錯誤は「トライ・アンド・リトライ」なのです。子どもたちはひたすら前向き。学びたいという気持ちを本能的に持っていて、大人の何気ない言葉を聞いていたり、教えていないことを理解していることもあります。

すべての子どもは学習者「learner(ラーナー)」です

子どもたちは、生まれながらに"学びたい"という欲求を持っています。私たちは、世界中の教育現場で子どもの学びを引き出すために、先生たちが厳選し、選ばれてきている優れた道具だけを、教育施設はもちろん、ご家庭用としても、これからも提供し続けていきたいと考えています。

やってみよう!

どうすれば歯車は回るかな?

予測して、やってみる。やってみたいことを見つければ、はじめはうまくできないことにも、くり返しチャレンジできます。

大きさと重さって関係あるの?

多い・少ないってどういうこと?

説明するのが難しい抽象的な概念や感覚を道具が目で見てわかるようにしてくれます。

どうやって思いを伝えよう?

相手の立場を想像すると、使う物も、選ぶ言葉も変わります。頭の中のイメージを表現するゲームでコミュニケーションする力が育まれます。

年齢別おすすめのあそび

1歳頃〜 はじめての知育あそび

まだ文字が読めなくても、数が数えられない頃でも大丈夫。楽しく夢中になって遊ぶことが、新たな発見につながっていきます。握りやすかったり、ピースが少なかったり、小さな子にもチャレンジしやすいあそび道具を選んでみて。

    2歳〜6歳頃 アクティブ・ラーニング

    「主体的に学ぶこと」を意味し、自ら試行錯誤を繰り返して答えを導き出すことで、科学的思考や問題解決力など、子どもたちの未来に繋がる力を育みます。大切なのは、子ども自身が「学びたいと思える心」を持つということです。

    分類する

    同じ色、形はどれ?分けることで発見!

      ルール

      みんなで遊ぶための決まり事を知ろう!

        試行錯誤

        偶然の発見に出会えることも!?

          磁石の図形遊び

          数学的センスがみがかれる!