MAGAZINE

違っているって素敵だねわたしだけの色、
見つけよう!

Vol.61Summer & Autumn 2024

星山麻木先生明星大学教育学部教授、
保健学博士

一般社団法人子ども家族早期発達支援学会会長、星と虹色な子どもたち代表。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。『ちがうことは強いこと』など著書多数。

一般社団法人子ども家族早期発達支援学会会長、星と虹色な子どもたち代表。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。『ちがうことは強いこと』など著書多数。

  • 素早く動く人情家イエローちゃん

    人を笑わせることやチャレンジが大好きで、いつも楽しくみんなと盛り上がりたい。元気いっぱいだからじっと順番を待つのは苦手。

    ► 好奇心を大切に。存分に発散できる自然の中で遊ぼう。

  • 心優しいオレンジちゃん

    心優しいあわてんぼう。人のことが気になって、自分のことは後回し。片付けが苦手で忘れ物も多く、時間に遅れてしまうこともよくあります。

    ► 時間より早めに声をかけ、片付けやすい工夫をしよう。

  • 正義の味方レッドくん

    なんでも1番、負けず嫌い。完璧がいいし、間違ったことは許せない。声は大きくて、かけっこ大好き。うまくいかないとイライラしちゃう。

    ► 全部一番じゃなくて大丈夫。好きなことを大事に。

  • 甘えん坊のさみしがりやパープルさん

    みんなにやさしくしたいのに、どうすればいいかわからない。不安で寂しくて、イライラして人にあたってしまうことも。本当は甘えたい。

    ► 甘えたい時は甘えられるよう、あたたかく見守って。

  • ゆっくりおおらかブルーくん

    人の気持ちがわかるやさしい子。任された仕事にも真面目に取り組む頑張りや。そこにいるだけで周りの人がいやされるおだやかな雰囲気も。

    ► 目に見えないやさしさや、おおらかなところを大切に。

  • 孤高の天才アクアさん

    一人で静かに過ごすのが好き。感性が豊かで感覚も敏感なので、大人数だと疲れちゃう。記憶力はすごいけど、気持ちを伝えるのは少し苦手。

    ► 無理に大勢で遊ばず、一人で集中する時間を作ろう。

  • 繊細なきちんとさんグリーンくん

    光や音、においに敏感で、人に話しかけるのは苦手。真面目できちんとしているけど、好きなことには時間を忘れて集中してしまうことも。

    ► 安心してリラックスできる工夫を。頑張りすぎないで。

「ふつう」って何だろう。
子どもたちの多様な特性と周囲の適切な対応について

子どもたちは一人ひとり違って、誰もが虹のようにいろいろな色を見せてくれます。もしかすると、「うちの子はほかの子と違うので心配」「みんなと同じように行動してほしい」などと悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。でも、子どもたちが一人ひとり違うのは当たり前。「違い」はかけがえのない素敵なことで、違うからこそお互いが輝き始めるのです。発達障害の診断はつかないものの、生活の中で困りごとがある子どもたちを「グレーゾーン」と表現することがありますが、私はその言葉が好きではありません。「白」が障害がないこと、「黒」が障害があることを暗に指しているように思えるからです。特性というのは、「本人の努力ではどうにもならない生まれ持った脳の機能上の違い」です。何かが優れている(=白)、劣っている(=黒)ということではありません。「少数派が黒」ではないのです。そこで私は、それぞれの特性を虹の色で表現するようになりました。

例えば、正義の味方・レッドくんは、正義感が強く、イライラしてしまうこともありますが、ルールや規則を守るのは決して悪いことばかりではなく、場面によって素敵なところになったり、少し困ってしまったりするだけのこと。周りの環境を整えたり、違う色の仲間に助けてもらったりすれば、素敵なところとして存分に活かすことができます。

オレンジちゃんが忘れ物や探し物で困っていたら、いつも丁寧で正確なグリーンくんが「あそこに置いてあったよ」と助けてくれます。そんなグリーンくんは没頭すると時間を忘れてしまうほどの集中力を発揮するタイプ。グリーンくんが何かに夢中になっているときは、ブルーくんが隣に座って、のんびりと待っていてくれるかもしれません。ブルーくんのおおらかな優しさが、繊細なグリーンくんをあたたかく包み込んでくれるのです。マイペース型のグリーンくんやブルーくんがみんなを見失っても、動きの速いイエローちゃんが走ってやってきて、「こっちに面白いものがあるよ」と大きな声で教えてくれるから、大丈夫! 「動きのエネルギー」が強いイエローちゃんは、静かに集中することは苦手だけれど、みんなを楽しませるのが大好きな太陽のような存在です。

こうして、それぞれが持つ虹色の違いを知り、お互いの行動の理由を理解できるようになれば、自然に助け合えるはず。人との関係性はもっともっと豊かになるでしょう。

もちろん子どもだけでなく、大人の中にもいろんな色があります。お子さんの色を知る前に、まずお母さんやお父さん自身が、「自分はどんな色かな?」と考えてみるとよいかもしれません。自分を理解することは、相手を理解するよりも難しいことですが、自分の色を知り、自分を大切にできるようになると、自分とは違う色の人のことも大切に思えるようになっていきます。

また、7色と言われる虹も、本当はグラデーションでとてもたくさんの色があります。私たちはみんなさまざまな色のスペクトラム(連続体)。誰もがいろんな色を少しずつ持っていて、それぞれの色が濃いか薄いかという違いがあるだけ。その組み合わせは人それぞれで、一人ひとり違うのです。

自分にしかない、唯一無二の色を知ることで、自分はどんなところが素敵なのか、どんな時に困ってしまうことが多いのか、困ったときに支えてくれるのはどんな色の人か、逆に自分は誰のことを支えられるのか…さまざまなことがわかるようになります。自分の色を違う色に合わせたり、変えようとするのではなく、自分の色をそのままに活かしていくにはどうすればいいかを考えることで、ありのままの私で、私らしく生きていけるはずです。

あなたの色は、どんな虹色ですか?

※引用文献:『虹色なこどもたち』(星山麻木著・世界文化社)
Writer: Miyuki Ohta, Illustration: Tokuhiro Kanoh