MAGAZINEあそびのもり
#子育て#発達
赤ちゃんや小さな子どもは、見えているかいないかが自分ではわからないため、もしも見えづらいようなことがあっても、周囲の大人がそれを見極めるのはたいへん難しいものです。子どもの見る力を見極めて健やかに育てるために、周囲の大人はどんなことを心がければよいでしょう。馬詰眼科・馬詰朗比古院長にお聞きしました。
お話を
聞いた方
馬詰朗比古先生
東京医科大学にて斜視のほか、ぶどう膜炎、神経眼科を中心に学ぶ。2009年の卒業後、総合病院や医大を経て東京都・福生市の馬詰眼科の院長に就任。白内障手術や網膜剥離手術、斜視手術、外眼部手術等を担当。自身も2児の父。
生まれたての赤ちゃんは見る力が弱く、生後1か月ぐらいまではほとんど見えていません。その後3〜6か月までに急激に発達します。
4か月ごろまでには動くものを目で追えるようになります。首がすわったら、お気に入りのあそび道具を赤ちゃんの顔の前でゆっくりと動かしてみてください。首を動かしたり顔を上げたり、あそび道具の方を見ようとする動きで見る力を確認できます。また、片目をそっと手でふさいだときの反応で視力の左右差を確認する「嫌悪反射(片目を隠されたときに不快感を示す反応)」を試す方法もあります。どちらかの目を隠したときに機嫌が悪くなる場合は、隠していない方の目が見えづらい可能性があります。(馬詰朗比古先生・以下同)
見る力がしっかりと育つのは3〜9歳。赤ちゃんの頃はあまり神経質になりすぎず、日頃のあそびや関わりの中で様子を観察しながら、まずは見守っていきましょう。
3歳児検診では「視力検診」が加わります。輪っか(ランドルト環)の開いているところを答えたり、イラストをつかった視力検査ですが、3歳児にとっては、初めての場所で知らない大人と話をするだけでも、かなりハードルの高い体験です。
2021年からフォトスクリーナー(目の屈折検査ができる検査機器)の導入が推進されています。これにより弱視(※)が発見しやすくなりました。生後6か月の赤ちゃんから大人まで、1秒で検査できるため、とくに乳幼児の視力検査に威力を発揮します。弱視は早期発見、早期治療が肝心。最近では小児科でもこのフォトスクリーナーを導入している病院が増えています。
お住まいの自治体の検診でまだ導入されていない場合は、お近くの小児科に問い合わせてみてもよいかもしれません。
検診のほか、小児科や眼科でも弱視や遠視が早期に発見できるようになり、小さい頃から眼鏡で視力の成長を助けるなど、治療も早くから始められるようになりました。
街で眼鏡姿の小さなお子さんをよく見かけるようになったのは、それも理由だったのですね。
子どもがスマートフォンやタブレットを見ているとき、顔と画面の距離が近すぎて驚いたことはありませんか?
スマートフォンやタブレットは小さい画面に情報が凝縮しているので、目の焦点をかなり近い距離に合わせる必要があります。近くを見るとき、人の眼球は無意識的に内に入る、いわゆる寄り目になりますが、これは「近見反応」といって、生理的な反応です。通常なら、遠くに目を向けると眼球は自然に外側へ離れるのですが、目が内に入ったまま筋肉が収縮して戻らなくなることがあります。これが急性内斜視。ここ数年、スマホやタブレットが原因で急性内斜視になる子どもの増加が学会でも話題になっています。スマホ内斜視ともよばれています。
うちの子はそんなに寄り目じゃないから大丈夫、なんて油断は禁物。目に見えて寄り目の場合は、すでに相当内側に入っている状態なのだそう。
スマホ内斜視になると、目のピントが近くで固まってしまい、遠くにフォーカスしづらくなり、ものがふたつに見えたりします。いわゆるピンボケの状態が続き、近視になる可能性も高くなります。とはいえ、スマホやタブレットをまったく見せないのは現実的に難しいかもしれません。
スマホ内斜視は、目の焦点が近いところで固まってしまうことが大きな原因です。予防するにはまずは画面との距離を離すこと、そして長時間見続けないことが大切です。30p&30分を目安に、近くだけを見続けないように気をつけてください。部屋やディスプレイの適度な明るさも大切です。
もしスマホ内斜視になってしまったら?
治療法には、ものが二つに見えるのを補助するプリズム眼鏡や、目の内側の筋肉を弛緩させる点眼などがありますが、いずれも時間がかかります。
まずは30p&30分のルールを忘れずに、親子で予防していきましょう。
子どもの目の育ちを助けるために、周囲の大人ができることはありますか?
一緒にあそぶこと、これに尽きると思います。楽しくあそびに夢中になっているときの子どもの視線や顔の角度など、何らかの異常にいち早く気づけるのは、あそびの中がいちばん。「目に良いあそび」や「目を鍛えるあそび」は特にありませんが、赤ちゃんが自分の手であそび道具を動かしたり移動させるだけでも、目の動きは育ちます。そういう意味で、すべてのあそびが目の育ちを助けるといえるでしょう。外で遊ぶこと自体が必然的に遠くを見ることにつながりますので、外遊びもおすすめです。
持って生まれた目の仕組みや親からの遺伝など、すべての子どもたちが良く見える目を持っているわけではないけれど、できる限り健全な視力を保ってほしいもの。あそびの時間を大切に、子どもの目の育ちをサポートしていきたいですね。