MAGAZINEあそびのもり


#子育て#親子ニューロ

ボーネルンドでは、一人ひとりの子どもたちに個別最適化されたあそびを提供したいと考えています。
子どもが本当に好きなあそびに没頭できる環境がある、親も子どものやり方を認められる。そんな社会を目指しています。そのために、さまざまな有識者の方と研究を進めています。
ニューロパーソナリティ研究もそのひとつ。ここでは、共同研究のパートナー・日本脳波トレーニング協会理事長の林愛理先生による「ニューロパーソナリティ入門」をご紹介します。
お話を
聞いた方
林愛理さん
日本脳波トレーニング協会理事長、株式会社NFBスタジオ横浜代表。大学にて児童心理学を学び、在学中から国内外にてニューロフィードバック、定量脳波解析の臨床、研究を行う。2015年NFBスタジオ横浜を設立。認知症予防やアスリートのサポートを行う。現在、ボーネルンドと共に、ニューロパーソナリティとあそびについての実証研究を進めている。
脳の役割は、呼吸、心臓の動き、血圧の調整、体温調節、消化や排泄などの「生命維持活動」だけではありません。自己意識や感情、思考、創造性、社会性など、高度な精神活動を生み出す中枢でもあります。人間が人間らしく生きるために最も大切な臓器と言われるのは、そのためです。
人間の脳においてもっとも発達した部分が「大脳」で、脳の80%を占めています。感覚処理や運動、思考、感情コントロールなどの役割があり、部位によって異なる機能を持っています。
現在、脳の研究はかなり進んでおり、どの部位が何をどんな風につかさどっているのか。いわゆる“脳の地図”はほぼ解明されています。また、脳の構造や働き方は一人ひとり違うことも明らかになっています。脳の個性や特性が、個人の個性や特性に直結していることもわかってきました。つまり、自分の脳の特性を理解することで、自分を知ることができるのです。
私は、個々の脳の状態や機能的特性を客観的に評価する手法として、定量脳波解析(Quantitative Electroencephalography: qEEG)」を用いています。この技術は、脳波データを数値化・統計処理することで、脳の働き方や構造的な傾向を視覚的に捉えることが可能です。
定量脳波解析は、欧米を中心に、医療、スポーツ、教育など多岐にわたる分野で活用されています。
この手法では、主に6つの周波数帯域(デルタ波、シータ波、アルファ波、ローベータ波、ベータ波、ハイベータ波)に分類された脳波活動を詳細に解析します。さらに、年齢基準に基づく平均値との比較により、特定の脳部位における活動バランスの傾向を明らかにし、そこから個人の認知的・情動的傾向を推測することが可能となります。
このような解析により、脳波の周波数分布や振幅のパターンを通じて、注意力や感情の安定性、睡眠状態、ストレス反応など、脳機能に関わるさまざまな情報を定量的に評価することができます。結果として、脳の“個性”や傾向を科学的に理解し、それに基づくアプローチを行うための有効な指標となります。

ただいま定量脳波解析中。電極がついたヘッドギアを装着して、脳波を記録します。
「ニューロダイバーシティ」という言葉を聞いたことはありますか。これは、脳や神経の構造および働き方の違いを、病的なものとして捉えるのではなく、人間の自然な多様性の一部として尊重しようとする考え方です。発達特性や認知スタイルの違いを、個性として肯定的に捉える視点として、近年、教育・福祉・雇用など多くの分野で注目されています。
私はこのニューロダイバーシティの理念に基づき、年齢や診断の有無にとらわれず、誰もがそれぞれに異なる“脳のかたち”を持っていることを前向きに捉えるための言葉として、「ニューロパーソナリティ」という用語を用いています。
この言葉には、「みんな違って、みんなすばらしい」という想いが込められており、個人の脳の特性を理解し、その人らしさを尊重する社会の実現を目指す理念が反映されています。
脳の構造や働き方は、一人ひとりそれぞれ違います。同じ脳はひとつとして存在しないのです。私は5000人以上の脳波データを解析していく中で、そのことを強く実感しています。
子育て中のみなさんに「ニューロパーソナリティ」について知っていただくことで、多様な個性への理解がすすみ、自分とわが子、そして家族で共に過ごす時間がもっと楽しくなることを願っています。