MAGAZINE

教育先進国・フィンランドの学びの現場から③

「独立記念日」も
「子どもの権利条約」も、
すべてが探究のきっかけに

#フィンランド#探究学習

『World Happiness Report』では8年連続で幸福度世界一に輝くフィンランド。
40年近く前から詰め込み教育を排除し、全国の小中学校で探究型学習を取り入れています。
教科の自由度が高く、先生によってさまざまに創造的な授業が行われている様子をフィンランド教育・福祉スペシャリストのヒルトゥネン久美子さんに聞きました。

ヒルトゥネン久美子氏フィンランド教育/福祉スペシャリスト

フィンランド在住32年。教育、保育、福祉分野を専門とし、通訳、視察、プロジェクトコーディネーターとして日本の研究者や教育関係者にフィンランド視察研究をコーディネート。オンラインセミナーや講座も多数。

フィンランド在住32年。教育、保育、福祉分野を専門とし、通訳、視察、プロジェクトコーディネーターとして日本の研究者や教育関係者にフィンランド視察研究をコーディネート。オンラインセミナーや講座も多数。

「独立記念日」も「子どもの権利条約」も
すべてが探究のきっかけに

12月6日は独立記念日。2025年でフィンランドは108歳になりました。その日のテレビでは、大統領官邸でのパーティーが放送されます。キレイに着飾った大統領夫妻が2,000人ぐらいの招待客を出迎えるところを延々と流しているのですが、これを国民のほぼ全員が見ていて、子どももみんな知っています。
ですので、翌日の保育園では、パーティの話で持ち切り。「大統領ってどうやって選ばれるの?」「選挙だよ」「選挙って何?誰が出るの?」「国のためにいいことをしたいっていう人たちだよ」という会話から「じゃあいい保育園にするための選挙をしよう」と発展していきます。
「月に1回はアイスクリームを出します」「友達を叩いたりしないようにみんなに伝えます」「おもちゃを貸します」など、3〜5歳ぐらいの子ども達が公約を発表して選挙。大統領に選ばれた子どもは、園にお迎えにきた父母や祖父母を、前日にテレビで見た大統領と同じように握手で迎えます。社会で起こっていることを自然に共有し、探究的な学びへとつながっていくのです。

  • 毎年11月頃に張り出される「国際子どもの権利条約」のポスター。<生きる権利><「育つ権利><参加する権利><保護される権利>をきっかけとして、「昔はどうだった?」「他の国は?」「僕たちの学校では?」など、それぞれの興味から探究が始まります。

フィンランドの教室では、子どもが主体的に積極的に参加して作り上げていく学びがベストとされています。でもみんながみんな、自分で関心があることを探せるわけじゃない。なので、導入部分を先生が導いたり、ときには先生が板書して、みんなで前を向き、ある意味受け身で勉強する。そういった時間もあります。
「自分はこれに関心があるかもしれない」と感じたり、逆に「こういうのはちょっと嫌だな」と思うことがあったら、「なぜ関心があるんだろう」「なぜ嫌なんだろう」と考えます。それが分かったら、「僕はアイデアマンだけど形にすることができない。だから作るのは得意な子にまかせよう」となる。そうやって、それぞれの得意を合わせるためには、先生がひとり一人の長所や弱いところを理解する必要もあります。
いずれにしても、大人がきちんとフォローできているかどうかだと思います。すごく成長していく子どもと、少し遅いかなという子ども、先生はそこを見極めていく必要があります。本当に子どもは千差万別ですから。

探究学習の先にある幸せ

一般的で安全な生き方だったり、社会が作った標識に従って、みんなが同じように生きてきた時代が、フィンランドにもありました。みんなで同じ山を目指すから、その山に登れなかった人は二流みたいに評価されてしまう。でもみんなが富士山を目指す必要はなくて、高尾山でも、それこそ山じゃなくても良いわけで、そういう選択を自分自身でできるようになった。自分の人生を自分軸で生きられることは、とてもしあわせなことではないでしょうか。
以前なら「あなたはそうかもしれないけれど、社会はそういうものじゃない」と言われてきたことが、「みんなはそういうけど、自分はどうだろう」と自分自身に問いかける。いまのフィンランドには、そういう考え方ができる人たちがたくさんいると日々感じています。